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訪問歯科の介護算定について

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介護保険(居宅療養管理指導)は算定していますか?

訪問歯科における介護保険(居宅療養管理指導)の算定
だいぶ以前はどのように算定していいかわからないために算定しないという医院が少なくありませんでしたが、昨今では腰を据えて訪問歯科に取り組んでいる歯科医院であれば、ほとんどの医院が算定されていると思います。

しかし、

状況によっては、「あえて介護を算定しない」という選択肢もアリなのかなと、私は考えています。

よく、訪問歯科コンサルティングの事業者のサイトなどを見ると、「介護を算定しないと損ですよ」的な言葉が見受けられます。
確かにある意味間違ってはいません。
しかし、どのような状況においても算定しないことが絶対的にいいと言いたいわけではありませんが、<算定できる → ならば算定する> と、短絡的に判断するのはちょっと待ったと言いたいのです。

そもそも居宅療養管理指導は、利用者さまに対して重要事項説明書を提供のうえでサービス提供の同意を得てサービスを開始するという前提があります。
当然ですが、算定をしない(サービスを提供しない)ことも何ら問題はありません。

では、介護を算定しないことにどういうメリットがあるのかを考えてみましょう。

介護保険(居宅療養管理指導)を算定しないことのメリット①

患者さまによっては受診回数が増える

どういうことかというと、これは居宅療養管理指導が介護サービスであり、医療保険とは別枠の費用負担になることとかかわります。
言うまでもなく居宅療養管理指導は介護サービスであり、(居宅として扱われる訪問先の)利用者さまは医療保険とは別で一定の費用を負担することとなります。

この仕組みがあることで、、、

訪問で多い、マル福やマル障をお持ちの患者さま
通常であればそれらの患者さまは、歯科通院あるいは内科の通院などでも費用負担は発生していないはずですが、訪問歯科では介護算定があることで費用の負担が発生する形になります。
公費適用がなく、それぞれの医療保険の負担割合での費用負担がある方にとっては訪問歯科でも(金額は違えど)費用負担があることに変わりはないですが、マル福やマル障をお持ちの方にとっては通常負担ゼロであるのに訪問歯科では負担が発生するのです。

そこまで大きい額の負担ではないので、費用の負担が発生することが受診自体を控えようとする動機にまではならないと感じてはいますが、”受診を継続すること” を控える動機にはなり得るとは感じます。
つまり、必要な治療がひと段落してメンテナンスに移行する際に、定期的なケアをお勧めしたとしてもお断りされ「何かあったら連絡します」と言われてしまうことも出てきます。
こちらとしても、費用のご負担がまったくない方へのメンテナンスは躊躇なく勧奨できますが、やはり費用のご負担がある方についてはメンテナンスの勧奨も若干腰が引けてしまう部分もありますし。

そういったことを考えると、介護算定がもしなければ患者さまごとの受診回数は多少増える方向にあるのかなと感じるのです。

介護保険(居宅療養管理指導)を算定しないことのメリット②

介護保険算定に伴う雑務負担の軽減

・カルテ入力や国保連への請求業務
・初診時の説明や重要事項説明書などの文書提供
・情報提供書の作成・送付
・集金
・保険証の確認作業
・返戻対応

介護保険算定に伴う雑務はざっと挙げただけでもこれだけあります。

特に、

「初診時の説明や重要事項説明書などの文書提供」
お金にまつわる患者さんとのトラブルはたいてい(理解の難しい)介護保険がらみです。
これを雑にやってしまうとクレームの元になります。
ひいては、大事にすべきケアマネさんからの信頼を貶めることにもつながります。
そういう意味では、作業の負担というよりも、居宅療養管理指導の知識をしっかり勉強して適切で親切な説明ができるようにしておくその負担が大きいということ。

「集金」
現金、振り込み、口座振替、色んな形で費用の集金を行う医院があると思いますが、いずれにしても集金業務はかなりの負担です。訪問先で集金していると訪問終了後に残額が一致せずにすったもんだするというのもよくある話。
マル福やマル障をお持ちの方の場合なら、介護算定しなければ費用負担がゼロになるので集金自体しなくてもいいことになります。
訪問歯科ではマル福やマル障をお持ちの方は非常に多いので、かなりの負担軽減になってくると思います。

「保険証の確認作業」
これも訪問歯科では地味に大変な作業です。
保険証を確認させてくださいとお伝えしても、はいどうぞと即座にバッグから出してくれる患者さまばかりではないのです。
患者さまもそのご家族も高齢な方が多いので仕方ないのですが、事前にご用意をお願いしてあっても、いざ保険証を確認しようとすると「ない」となって探し回るなんてことはよくあります。施設であっても確認したら期限が切れていたとか、負担割合証が見当たらないとかよくあります。
患者さんや家族に聞いても介護保険証のありかがわからないようなときにはケアマネさんに確認すればいいのですが、それもわざわざ電話してケアマネさんに確認するなりFAXしていただくなりの作業が必要です。
介護保険証の期限が切れたときにも、患者さんや施設の方から新しい保険証を出してくれることの方が少ないので、こちらから更新されたかどうかを聞いて新しい保険証を確認する必要があります。

「返戻対応」
介護保険の認定変更があって介護保険証が更新されたり、負担割合が変更されたりなどあっても、患者さんや施設側からその情報を得られることのほうがむしろ少ないです。
ですので、たいてい介護の返戻が来てそのことを把握することになります。
その場合も、やはり患者さんや施設やケアマネさんに新しい介護保険証を確認して国保連へ再請求することになります。
返戻の処理そのものよりも、やはりこれも保険証の確認や介護保険証の有効期限の管理が大変になります。


これらの業務の負担はかなり大きいものになります。
介護保険をもし算定しなければ、これらの負担がなくなることになります。


あと、介護保険を算定すれば避けては通れない情報提供書の作成やケアマネさんへの提供も大きな負担です。
ですが、これについては次項でも書きますが、ケアマネさんに情報提供することが作業の負担を差し引いてもこちら側にとって大きなメリットになると私は考えています。

逆に、介護保険(居宅療養管理指導)を算定しないことのデメリット

もちろん、算定しなければ算定できるはずの分の利益が下がるので、それが大きなデメリットではあります。

それともうひとつ考えなければいけないと私が思うことは、
「ケアマネさんとの接点が減ること」です。

介護保険を算定しなければ、算定要件であるケアマネさんへの情報提供も不要になります。
yui では、(「在宅を取れる医院は強い。」の記事でも書いたように)この情報提供はケアマネさんに対するもっとも貴重な「営業活動」のひとつであると捉えています。直接足を運んで情報提供しているわけではありませんが、FAXで送付している情報提供書をきっかけにご依頼をいただくケースも少なくありません。
情報提供にとどまらず、介護保険を算定しているがゆえにケアマネさんに連絡を取ってお話をすることもあったりします。
介護保険を算定していることで持てているケアマネさんとの接点を失うとすれば、患者さんを増やすうえでかなりのデメリットです。

ただ、情報提供は介護保険を算定していないからといって情報を提供してはいけない決まりなんてありません
有用な情報提供であればどんどんすればいいことですし、相談や報告があれば介護保険を算定していようがしていまいがすればいいのです。

ですので、これは厳密にはデメリットとは言いづらいものかもしれません。

まとめ

メリット①で挙げたように、受診回数が多少増えるはずだと書きました。
とはいえ、算定することで得られる利益と天秤にかければおそらくそれを上回るほどにまでは行かないのではないかと思います。
ただ、メリット②で書いたような雑務の大きな負担を踏まえて総合的に考えてみると、「あえて介護を算定しない」という選択肢もアリなのかなと思うのです。

ただ、算定しないことを闇雲に勧めているのではありません。
もう一度言うと、ここで言いたいのは、取れるから算定するではなく、医院の状況と照らして算定するのとしないのとどちらのメリットが大きいのか「検討する」姿勢が必要だということ。


実際、算定することが明らかに医院にとっての利益になることも多いはずです。
訪問歯科を実施している歯科医院では算定している医院のほうが圧倒的に多いでしょう
yui のかかわる訪問歯科でも、どの医院も介護保険は算定しています。

多くの歯科医院では、やはり算定しないメリットを踏まえたうえでもやはり算定したほうが有益だという結論を得るかもしれません。
yui の提携医院では、介護保険にかかわる雑務のほとんどを弊社がサポートしているため、介護算定をしないことのメリットは(医院にとっては)少ないという状況があり、医院としては算定しない選択はありません。


では実際に、介護算定をしないという選択肢が現実味を帯びる状況は?と考えると、個人的には以下の2つの状況だと思います。

人員が少なく必要以上にスタッフの業務負担を増やしたくない。
訪問診療に常時同行する歯科衛生士を確保できない。


特に2つ目について、
衛生士が同行しないということは、居宅療養管理指導の歯科衛生士分の算定ができないということになります。
ということは算定できるのは月2回の歯科医師分の算定1032点のみということになり、介護算定によって得られる利益が少なくなるため、より一層介護算定しないメリットの重みが増すことになります。

こういった状況がもしあれば、介護算定しないという選択肢は積極的に考えてみてもいいかもしれません。

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