居宅療養管理指導の情報提供の手段
目次
どのように情報提供を行うのか
歯科医師が行なう居宅療養管理指導については、平成24年4月からケアマネージャーさんへの情報提供が算定要件となっていて、情報提供なしでは居宅療養管理指導の算定ができません。
居宅療養管理指導についての算定基準について、「老企第36号 第2の6(2)」には以下のように定められています。
主治の医師及び歯科医師の行う居宅療養管理指導については、計画的かつ継続的な医学的管理又は歯科医学的管理に基づき、指定居宅介護支援事業者等に対する介護サービス計画の策定等に必要な情報提供並びに利用者若しくはその家族等に対する介護サービスを利用する上での留意点、介護方法等についての指導及び助言を行った場合に算定する
「指定居宅介護支援事業者等」つまりケアマネージャーさんに情報提供を行う必要があるのです。
では・・・
どのように情報提供を行うのか。
このことは、居宅療養管理指導を算定する患者さまを多く持つ歯科医院ほど悩ましい課題となっているかもしれません。
情報提供の方法についても、「老企第36号 第2の6(2)」には以下のように定められています。
ケアプランの策定等に必要な情報提供は、サービス担当者会議
への参加により行うことを基本とする(必ずしも文書等による必
要はない。)。
当該会議への参加が困難な場合やサービス担当者会議が開催さ
れない場合等においては、左記の「情報提供すべき事項」(薬局
薬剤師に情報提供する場合は、診療状況を示す文書等の内容も含
む。)について、原則として、文書等(メール、FAX等でも可)により、ケアマネジャー等に対して情報提供を行うことで足りる
ものとする。
なお、サービス担当者会議等への参加により情報提供を行った
場合については、その情報提供の要点を記載すること。当該記載
については、医療保険の診療録に記載することは差し支えないが、下線又は枠で囲う等により、他の記載と区別できるようにすること。
また、文書等により情報提供を行った場合については、当該文
書等の写しを診療録に添付する等により保存すること。
ここに記載があるように、基本はサービス担当者会議への参加により情報提供を行うものとされています(文書の提供は必ずしも必要ではありません)
サービス担当者会議への出席
サービス担当者会議は、利用者さんが要介護更新認定を受けたときやケアプランが変更になったときなど利用者さんの環境や身体状況などが変わったときに開催されます。
ケアマネージャーさんがケアプラン原案を作成しサービス調整を行った後、サービス担当者を集めてケアプランの内容を検討する会議です。
これに参加して、歯科の立場から専門的な助言や指導、情報提供を直接行うことは有意義です。
ケアマネージャーさんはもちろん、参加される関連職種の方々と直接顔を合わせて意見交換できる得がたい機会にもなり、訪問歯科の周知活動としても意義は小さくないはずです。
ですが、診療に忙しい歯科医師が時間を空けて開催場所まで直接足を運ぶのはハードルが高いと思います。患者さま1人2人の担当者会議ならなんとかなっても、多くの担当者会議に出席することは困難であると言わざるを得ないでしょう。
うちでもケアマネージャーさんから、たまに担当者会議参加の打診があります。
「たまに」であるのは、やはりケアマネージャーさんも歯科医師の参加は難しいという認識があり、多くの場合で打診することを見送っているのではないでしょうか。
サービス担当者会議への参加による情報提供はあくまで基本です。
会議への参加が困難な場合やサービス担当者会議が開催されない場合についての情報提供は、
「文書等(メール、FAX等でも可)により、ケアマネジャー等に対して情報提供を行うことで足りるものとする」とされています。
FAX
現実的な情報提供の手段として、FAXで情報提供を行っている医院は多いのではないでしょうか?
厚生労働省などは介護事業者に対しても情報共有にICTツールの積極的利用を喚起する施策も行っているようですが、アナログな情報通信手段であるFAXというツールと介護事業者の親和性は高く、まだまだ広く利用される馴染み深い通信手段です。
独自に情報提供書のフォーマットを用意しなくとも、最近のレセコンの多くは情報提供書の作成や印刷に対応していますので、担当者会議への参加に比べるとハードルはかなり低いでしょう。
ただし、FAXでの情報提供も手間はかかります。
印刷と送信です
作成した情報提供書をその都度印刷し、それをFAX機器で毎回相手先FAX番号を入力して送信するのはかなりの手間です。
居宅療養管理指導を算定する患者さまが増えれば増えるほどこの手間が負担となります。
過大ではないものの、この用紙のコストと通信費のコストもかかりますね。
とはいえ、
比較的簡単に情報提供を行うことができるFAXは、一番現実的な方法であるように感じます。
メール
実質送信に費用はかからないので、もっともコストがかからない手段だと思います。
ですが、何より面倒なのは、
メールアドレスの把握
相手先のアドレスを教えてもらう必要があります。
口頭だと聞き間違いもありますし、FAXなどで教えていただくのも手間をかけるので気が引けます。
さらにセキュリティの面でも不安。
FAXでもそうですが、患者名を伏字にして送るなど個人情報への配慮がより求められます。
レセコンなどで、作成した情報提供書をメール送信する機能があればいいですが、そうでなければ文面を作成する必要もありますね。
レセコンなどに情報提供書をメール送信する機能が実装されているのでなければ、メールは現実的な手段ではないように思います。
郵送
私の知っている歯科医院にも郵送で情報提供を行っているところがいくつかあります。
ですが、これには大きな手間が伴います。
印刷封入や送付の手間です
作成した情報提供書を印刷し、それを折りたたんで封入し、宛先を書いて郵送するという手間。
算定のたびに毎回これをやると途方もない手間がかかるので、毎月まとめて送るのがやっとだと思います。そうなると「タイムリーな情報提供」を犠牲にしなければなりません。
さらにこの手段だと、用紙や封筒、郵送代といったコストがかかります。
個人的には、郵送という手段に他の手段に勝るメリットを見出すことができないように感じます。
手渡し
情報提供書を直接お持ちするという、究極のアナログ手法で人手も時間もかかります。
とはいえ、これにはメリットがまるでないとは言えません。
ケアマネージャーさんに対する訪問歯科のPRという意義も見いだせるからです。
直接情報提供書をお持ちして顔見せすることで記憶にとどめておいてもらいやすくなるかもしれませんし、患者さんの紹介につながることももしかしたらあるかもしれません。
在宅を取れる医院は強い。 | 往診の作法。
在宅患者さんを獲得する難しさ 在宅を取れる医院は強い。 これは創業当初からずっと、yui の訪問歯科の訴求活動のテーマでした。屋号に「在宅歯科サービス」と付けている…
↑この記事で、あいさつ回り(訪問歯科のPR営業)の意義は低いと書きました。
ですので弊社はPR営業は一切やっておらず、情報提供を手渡しでお持ちするということも行っていませんが、まったく意味がないかと言えばそうとまでは思いません。
ただの営業活動ではなく情報提供書をお持ちするという目的を持ってうかがうことでもあるので、もし余裕があれば実践してみてもいいかもしれません。
yui の訪問歯科では・・・
担当者会議への参加は先生の負担を考えるとやはり難しいです。
郵送と手渡しについては手間と労力を考えると、これも厳しい。
ですので、主にはFAXとメールにより情報提供を行っています。
弊社が提供する 訪問歯科総合支援ツール HomeClinic にはFAXやEメール、ショートメールで情報提供できる機能が実装されており、弊社はこれで情報提供を行っています。
最終的に宣伝なのねと言われればそうなのですが、
ここでは弊社のシステムに限らず、なんらかのシステムでそういった機能があるのであればぜひ利用すべきだということを強く言っておきたいのです。
居宅療養管理指導の情報提供は、算定数が増えるほどに業務を圧迫します
情報の作成(情報提供書)に目が行きがちですが、どう提供するのかも非常に重要であり、そのタスクの効率性にもしっかり目を向ける必要があるのです。
ここで挙げた情報提供の手段でもっとも現実的であると思われるFAXによる提供においても、通常であれば印刷と送信の手間は避けられません。
ただ印刷して送信すればいいだけではありません。
用紙の補充、インクの補充、印刷した帳票のファイリングまたは廃棄(シュレッダー)、送信操作(宛先番号の入力)などの付随する細かい手間も伴います。
レセコンや文書作成ソフトなどの中には、作成した情報提供書をシステム上でFAX・メール送信できるものがあります。
手間を考えたとき、そういった機能は作業の効率をかなり向上してくれます。
システム内で送信が可能であるということは印刷が不要ということ。
これは圧倒的なメリットなのです。
弊社のものも含めて、ぜひそういったシステムの利用も検討してみてください。