訪問歯科とショートステイ
訪問歯科の訪問先で多いのは、在宅、グループホーム、老健、特養、有料老人ホーム、障がい者施設、(入院中の)病院・・・
このあたりが多いと思います。
数は少ないものの、たまにあるのが ショートステイへの訪問 です。
訪問歯科診療の訪問先として認められているのは「寝泊りするところ」というのが基本原則になり、基本的にショートステイへの訪問は可能です。
ショートステイへ訪問するきっかけとして多いのが、
在宅で訪問中の患者さまとの訪問日時のすり合わせがうまく行かず、定期的に利用されているショートステイの利用日にショート先施設へおうかがいするパターンです。
患者さまのなかにはショートステイやデイサービスをケアプランに多く組み入れていて、ご自宅へ訪問できるタイミングが極端に少ない方もいらっしゃいます。
そういった場合の解決策としてショートステイ先へおうかがいしましょうかとなるわけです。
在宅で介護を受けておられる方にとって、ショートステイ先で訪問歯科を受診することはメリットとも言えることがあります。
ショートステイでは居宅療養管理指導は算定されず、医療保険のみの算定となることです。
たとえば、マルフクなどをお持ちで医療保険の負担がゼロである方の場合には、ご自宅で訪問歯科を受診される場合には居宅療養管理指導が算定され負担割合に応じた金額の負担がありますが、訪問先がショートステイ先の場合は居宅療養管理指導は算定されないため、訪問先がご自宅からショートステイに変わることでご負担がまったくなくなるということになります。
ご自宅での訪問歯科受診のように歯科医院とその都度日時のすり合わせをしたり立会いをしたりといった必要もなくなるのでお忙しいご家族さまにとってはそれも好ましいことかもしれません。
歯科医院側にとってもメリットはあります。
ショートステイへ訪問できることで多くの場合訪問日時の縛りがゆるくなりスケジュール調整が楽になることも多いです。
在宅であればご本人さまが在宅の日を狙って訪問する必要がありますし、在宅の日でも訪問系の介護サービスなどがあればその時間帯を避けて訪問日時を調整する必要があるため、そういう意味ではショート先へ訪問する場合は利用中の日であれば時間が限定されてしまうことが比較的少ないのです。
ただし、いいことばかりではありません。
ショートステイ施設は訪問歯科の受け入れに前向きでない場合が多いです。
入所系の施設と比べると、訪問歯科とかかわることが少ないショートステイ施設では訪問歯科受け入れに慣れておられないことや、医療が介入することで生じる健康状態の(今以上の)管理やご家族さまとの情報共有のハードルが上がるため、受け入れがご本人さまにとって必ずしも良いと判断されず慎重になる部分もあるのかもしれません。
在宅の訪問歯科で、患者さまが施設に入所になったり入院されたりといった理由で途中で訪問先が変わることはたまにあります。
移られた先で訪問歯科を継続する場合も多いので、その場合はこちらから(あるいは家族から)施設に対して訪問を打診するのですが、入所系施設や病院で断られることはまずありませんが、ショートステイ施設については訪問受け入れを断られてしまうケースが実際よくあります。
訪問できたとしても職員さまに口腔ケアの介入や課題やリスクの把握などの部分で、入所系施設と同様の対応は望めないことも少なくありません。
施設側の事情もあるのでそのあたりも斟酌しつつ、医院側としても施設側に対して対応してもらうのが当然といったスタンスは慎み、ご家族とも密にコミュニケーションを取るなど柔軟に対応する必要があります。